映画感想:カイジファイナルゲーム

最近見た映画の中では珍しいくらい出来の悪い映画

邦画業界は興業成績と作品の品質が不釣り合いな業界だと思っている。 数々の映画がテレビ番組で大々的に宣伝し、番宣のために俳優がバラエティー番組に出て、映画の質を求める層とは異なるマーケットで興行成績を収めてきた。

そんな、邦画業界の動きにより次第に、出来の悪い邦画、面白い洋画という意識的構図が出来上がってしまったように思える。しかし、映画ファンもそれぞれで、邦画しか見ない層、洋画しか見ない層という派閥ができてしまい、映画鑑賞を趣味としても全く見ている映画が合わない状況に直面してきた。

しかし、近年面白い日本映画も多くなってきたと感じるようになってきた。これは、映画を人気や俳優だけでなく、レビューサイトの評判や口コミ、ブログなどを参考にして映画を選ぶことが増えたからでなはいかと考える。面白いと言われている映画を観にいくことが、映画ファンのコミニュティーに縛られなくなったのではないだろうか。と言っても、日本映画的な暴力映画やソフトストーリーベースの映画が面白いことに気づいたということの現れでもあるとも思えるが。

こんな日本映画を取り巻く状況の中で大資本の日本映画も手放しでは褒めれないが面白い映画が多くなってきた。多くの映画がその映画で撮りたいものを中心に据えて、見どころ自体はうまくいっている映画が多くなったように感じる。

そんな状況の中で、この映画は近年の邦画の中でも珍しいほど面白くなかった。

実写版カイジというシリーズはそもそもそんなに出来の良いシリーズとは思ってないが、面白いと思える要素は以下に思える。 ・チームまたは個人としてあっと言わせようというコンゲームものとのしての面白さ ・現実のゲームに近い形で設計された破滅的なギャンブルに勝利するカタルシス ・俳優たちのキャラの濃さ 以上の3点だろう。

今回の映画は正直言ってどれもうまくいっていない。

世界設定としては面白くなりうる設定はあった。日本経済が崩壊してある種ディストピア化された日本という設定はワクワクさせられる部分はあった。自分自身はディストピア化されるというファンタジー要素は好きな部類ではある。しかし、そうゆう類の世界設定はその世界で生きている人々の思想的変化を極めてありそうな形で描くことこそが面白い要素なのではないかと考えている。 今回の映画は元々ファンタジー要素であった帝愛世界が現実に介入しただけで、登場する人物たちの思想的にはあまり変わって変化がない。もっと人生を諦める人間たちで溢れかえっててもいいはずの世界で、多くの人間たちは上の人間に盾付くエネルギーは残っているようだ。これでは、なぜカイジという人間が主人公である必要があるのかがわからない。カイジが主人公である理由は少しだけ頭が切れて、前のシリーズから主人公であるからという以外に理由がない。主人公カイジを応援する気にはさらさらならなかった。

今回用意されたゲームはどれも面白そうとは思えない。中でも、作品の大部分を要する天秤のゲームが一番面白くない。ゲームの勝利方法が個人の持てる資産だけで戦うのは如何なものか。そもそもゲームなのか?シリーズのギャンブルの面白い部分は運勝負に見えて裏で仕組まれているため勝てないゲームが根本ではなかったのでは?そのゲームの裏をかき、純粋なギャンブルに土俵を持っていくというのが面白かったのでは?正直、今回のゲームは1作目の香川照之の演説っぽいことをやらせるために無理やりギャンブルっぽい体をなしただけの、ゲーム的要因が全くなかった。勝ち方も雑。無計画。元々勝ち線のゲームになんとかして勝っただけ。カイジが役に立ってない。 したがってギャンブルに勝利する頃には呆れ切ってしまう。もう少し、ゲームに対する事前準備の段階からゲームの意図、勝ちのロジック、計画性がもっと描写されていればよかったのではないかと思う。歯車を作っているところを見せないで歯車がハマった部分だけを見せられたよう。こんな描写で快感を得させようとするのは観客に対する冒涜以外の何者でもない。

キャラの濃い俳優たちは出てきはするが、濃くするために濃くしているだけ。大声を上げる以外に方法がないのかと思ってしまうほどキャラが単調。企画会議の段階でダサい発想の元観客を舐め切って演出プランを考えたに違いない。もし、真摯に演出プランを考えていたのであれば、才能がないことを早めに感じた方が良い。新しくキャラを作り出すことを放棄し、惰性のみで作られた映画。俳優たちが可哀想。

最後の展開は本当によくないと思った。ただでさえ劇中常にうざいと思ってしまう女キャラが急に悪くなる。今まで騒いでいたセリフが全て偽善になってしまう。なのに、しょうがない面しているところに無性に腹が立つ。人の褌で稼いだ金を平気で奪うような極悪。今回出てきた悪役の中でも一番の悪。極悪。どうせなら、貧困層の支援のために全額使って手元には一銭も残らないような展開にすべきだった。 いつも通りや懐かしさのためだけにキャラクターの人権を無視した最悪の展開。

ただ、唯一この映画で面白かったのは最後に登場した後藤洋央紀だけだろう。